悲劇の航空機などと言うと、航空スキーの皆様ならば、設計思想の破綻や試験中の事故、あるいは予算制約なんぞの政治的横槍なんかで、せっかく生み出されていながら実用に至らなかった─そういう飛行機を思い浮かべられる方が多いのだと思う。

たとえば超音速戦略爆撃いくさ乙女たんとか。

そういう基準に当てはめるならば「なんでB2?」とお思いの方もおられるのではないかというのは承知している。
確かに彼女は価格高騰で調達数削減という一つの悲劇のヒロインではあるが、亜※利加軍の中にあってはきちんと実用化されて明確な用途を与えられているのだから、それなりの有用性と価値を見出された幸福な航空機だと言えると思う。
ではなんで彼女が悲劇の航空機なのだと言うことになるのだが、それは航空機について語るべき本道からちょっとハズれた分野においてのことなのである。
そう…

UFOエイリアンクラフトがうんぬんとかいう分野において

そう、その方面のヒトタチにとってB2(というか全翼構造の航空機)は「トブはずのないケージョー」であって「チキューガイチテキセーメータイのおおばぁてくのろずぃ」なる物の産物だとか後ろ指さされちゃっている
さらに困ったことにこの説がちょっと市民権を得ちゃってる辺り
全翼構造を採用した事であるとか、高度なステルス能力であるとか、当時最新の航空技術(全翼自体は40〜50年前にもあるけど B35とか)の結晶であって、その点で語られれば工業知識のちょっとした啓蒙役にすらなれそうなB2が、よりにもよってUFOもどき扱い。
ハンガー内のスピリット・オブ・○○(B2は数が少ないので艦艇のように固有名がある)に流す涙があるならば、おそらく泣いておるんではなかろうか(汗)


以下蛇足

ジャンボジェットなどが普通の飛行機だと思って見ている、飛行機慣れ…というか機械慣れ…というか…していない人には理解しにくいのかもしれないが、そもそも飛行機というのは、飛ぶことだけが目的なら翼さえあればそれでいい─。
極端な言い方をすれば、胴体というのは旅客に貨物に燃料に…といったものをできるだけ多く詰めるように、必要に迫られて翼にのっけられた「荷物カゴ」みたいなもので、本来は飛行に関しては全く無関係というかただの空気抵抗。極論をいえば飾りであり偉い人にはそれがわからんのですといった程度のものでしかない(そりゃ旅客機や輸送機は胴体も重要だが)。
想像してもらえると良いのは、全翼機というのは、子供が絵で書くようないわゆるヒコーキの形状から胴体を抜き差って、左右の主翼をくっつけた形ということ。胴体は飛行に関係無いのだから、バランスさえとれればこの形状で問題なく飛べるのである。

そも、有人飛行機第一号ライトフライヤーにも、胴体らしい胴体は無いといえる。主翼を支えるフレームの間にエンジンと人が乗っかっているような物だ。人類初の飛行機からして全翼機だったのに、「全翼機は飛ぶはずがない」とはユカイな話だろどー考えても。
ちなみに(一応は)実用化された全翼機(XB、YB)B35が初飛行したのは40〜50年前。しかもこいつ、なんとも愛嬌のあることにプロペラ機なのである(笑)。

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